流華の楔


「…ん? どうした新崎君」


「いいえ、何でも。あの…少し席を外しても? 近藤をよんできます」



ついでに、外の五人も確認した方が良いだろう。



「構わぬぞ」


「ありがとうございます。では」





和早が立ち上がった時、突如焦りの気配がした。

数名が慌ててその場を去ろうとしているが――






「盗み聞きとは、頂けませんね」



「あ、あははははー…」



和早の素早さには誰も敵わず、廊下を少し進んだところで彼女に回り込まれた。



「…ところで永倉さん」


和早の視線が、永倉へと移る。



「準備が出来次第局長をお呼びしてくださいと言いませんでしたか、私」


「…い、言いました」


「では、よろしくお願いしますね、永倉さん」



微笑んでいる。

たしかに微笑んでいるのに、目が笑ってない…!




「…は、ハイ」





和早には二度と逆らうまいと、この時永倉はそう誓った。
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