流華の楔




夕暮れ時。

ちょうど、巡察に出ていた沖田が帰ってきた頃。



「皆に話がある。広間に来てもらえるだろうか」


一休みしようと腰を下ろした瞬間近藤が現れて静かにそう言った。

本人は平静を装っているらしいが口元がわずかに歪んでいる。



「………」


なにか良いことでもあったんだろうなと沖田はにらんだ。 




「話ってなんだろうなー。さっきのお偉いさんと何か関係あんのか?」


「あれ、新八さん…お疲れ様です。ひとまずいってみましょうか。近藤さんのニヤケ顔も気になることですし」


「(に、ニヤ…?) ああ、そうだな。てかよ、他の奴らはどうしたんだ? ここにいんの俺と総司だけだよな…」


「え…そうなんですか? どこかその辺にいるとかじゃ…」



芹沢達はいいとしても、他の皆がいないのは少々気になる。




「(…和早さんも見当りませんし)」



沖田は首をひねった。
もしや、平助か斎藤あたりが彼女を連れ回していたりするのだろうか。


あの人達は彼女の事を気に入ってるわけだし有り得なくもない。




「……ま、僕には関係ありませんけどね」




そう、関係ない。

彼女の存在など、自分には関係ないのだ。

< 28 / 439 >

この作品をシェア

pagetop