流華の楔
後悔というものは先に立つことを知らない。
「くそ、まいったな…」
不甲斐ない。
土方は壁にもたれ、俯き加減に笑った。
すぐそこには沖田と和早がいる。
聞いてはならないものを聞いている気がした。
「…あいつ、本気だったのか」
まさかな、と。
心のどこかで本気にしていなかった。
沖田総司という人間を理解していたつもりでいた。
だから。
あの日「女の為に生きる」と言った時も。
子供の戯れのようなものだろうと決め込んだ。
そして今日、聞いてしまった。
あの「沖田総司」の、本気を。
「…っ」
拳を握り、唇を噛む。
戦の真っただ中、己がこれでいいのか。
「(…もういい)」
振り切ろう。
戦に差し障る未熟な想いなど、捨ててしまえばいい。
全てを、無かったことにするんだ。