年下の悪魔




私には、考えがあった。

涼君は車に乗ったらギア付近にあるドリンクホルダーに携帯を入れる癖がある。

その時携帯を盗んでムービーを全部消してやる。

そうすればキスもしなくて済む。

体は許しても、唇は元彼だけ。

それに、散々いろんな事した上でキスなんて無理。

こんなムービーまで録って、脅迫して来る奴とキスなんかしたくない!






そんな事を企んでるなんて知らず涼君は、残り時間を楽しんでる。

とりあえず、私もその場は何とかやり過ごした。



精算を済まし、いつもと変わらぬ雰囲気で店を出て車に乗り込んだ。

助手席に座り、涼君がドリンクホルダーに携帯を入れる瞬間を見計らった。

すぐに手を出しちゃダメだ。

ゆっくり自然な動きで取らなきゃ。

しかし、今日に限ってドリンクホルダーに携帯を置かない。

なのに、車は帰路に着き、もうすぐいつもの自販機に着く。




「ゆいさんの考えはわかってますよ。俺の携帯、狙ってるでしょ?」


「え?」


いきなり意表を突かれ声が裏返る。

読まれてる?


「俺、そんなに甘くないですよ?」

いつもの自販機に着く途中にある、小さな空き地。

住宅街から離れ、人気は全くない場所に車を泊められた。

街灯も何もない真っ暗な場所。

ここからなら家まで歩いて帰れる、でもエンジンも止められ助手席の鍵もロックされてる。


「約束、守ってもらいましょうか?」



月明かりで目が慣れて来た。

悪魔みたいな笑顔がうっすら見える。

運転席から身を乗り出し、涼君の上半身は助手席にいる私に迫ってた。

「じゃないとムービー」



本当にムカつく。









――――っ。



















「いたっ、歯ぶつかったじゃないですか」

「でも、唇触れたからいいでしょ…」

微かに声が震えた。

泣いてるわけじゃなくて悔し過ぎた。

< 42 / 205 >

この作品をシェア

pagetop