おしゃべりノート
 それから5ヶ月、敦也は必死に勉強した。かつてないほどの頑張りを見せる敦也だったが、不思議と苦にはならなかった。
 5ヵ月後、ぼろぼろになったノートを入れた、鞄をを持って、淳也は、望高校の校門にいた。
「淳也、今日はさすがに、俺も喋れない。今まで積み重ねてきたものを、思いっきりぶつけろ!」
 淳也は黙って頷き、下駄箱へと姿を消した。
 この5ヵ月間、本当に毎日、4時間以上勉強を続け、ノート相手に、面接の練習までしてきた。数ヶ月前の淳也とは大違いだった。
 この学校は、筆記試験と面接を同じ日に行う。時間はかかるが、一日で済むため、気持ち的には幾分楽だった。
 数時間が経過し、午後2時過ぎ、淳也が、下駄箱から出てきた。額には、少し汗も滲んでいる。
「淳也、よくやった。俺から見れば、お前の面接ばっちりだ!」
「ありがとう」
「合格発表は?」
「たぶん、1ヶ月後」
「そうか…。なぁ、もし合格してたら、淳也…俺のことどうする?」
 淳也は、その質問に迷うことなく答えた。
「お前はずっと持っとくよ」
 こうして、1人と1冊は、家路に着いた。

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