短編-ワガママな恋。〜始まりのあの日〜
交差点を曲がって、暗がりの路地に入った時。
俯いて歩いていたあたしの前に、大きな影が出来た。
え、
恐る恐る顔をあげると。
「…誰ですか?」
そこには見覚えのない男子数名が、睨むようにあたしを見ていた。
「あー、たくさんの人と付き合い過ぎちゃって忘れちゃったかな?」
一番手前にいた男が、あたしを見て言う。
ふと、目線の先を奥に向けると。
つい最近、喫茶店で別れ話をした男が立っていた。
こいつら…、
「なぁ、俺ら好きだったよ。お前の事。…十分尽くしてやったじゃん?」
そう言って男は、あたしの手首を力強く握った。
「ちょ、イタっ。」
「もう一回言ってよ。付き合いたての頃みたいに"好き"ってさ。」
「飽きた、とか言わせねぇからな?」