好きなもんは好き<短>
「あっ」
力の抜けてしまった手から、するりとラブレターが落ちた。
それは風に乗って、運悪く、私の横を通り過ぎようとしていた天君の足元に。
『わっ』
そして、私のラブレターは天君に踏まれてしまった。
天君はすぐに気がついたみたいで、足を退けてくれたけど。
ピンクの可愛い封筒には、くっきりと靴跡が残ってしまっていて。
『手紙…?』
見られたくない。
『って…花高!?』
申し訳なさそうに手紙を拾う天君の前に姿を現す。
「手紙、かえして」
『え!?あぁ、これお前の?
悪ぃ…踏んじまった…』
「うん」
踏んだのは偶然なんだし、迷惑って言われたのだって、本心なんだったら仕方ない。
なのに……
笑えないやぁ。
「気にしないで」
って
「いいよ」
って
言えないよぉ。
『天君好き』
って
「もう言えないや」