ふわふわのいた町
「うん、地元の警察じゃなくて、東京地検特捜部に逮捕されたんだって」
「ふーん」
東京地検特捜部、名前はドラマやニュースで聞いたことがある。
「ホントは大物政治家の汚職の証拠を見つけたくて。調べる為に脱税で逮捕したんだってさ。だから別件」
「わかった。別の件で別件ね」
「そう、だから社長さん、脱税の件はさっさと認めて保釈金納めて出てきちゃったの」
「ふーん、なんかアキ、詳しいね」
アキはニッと笑った。
「アキ、お父さんとそんな話するんだ?」
「ううん、別にいつもじゃないけど。そん時はお父さん、えらく一生懸命しゃべるから、つい付きあっちゃった」
「そうなんだ」
「お父さんの会社さ、吉岡建設の下請けだからさ。いっつもいじめられてるし」
アキんところが建設関係の会社をやってることを思い出した。そうか、吉岡建設の仕事をしてたんだ。
「同じ社長でもさ、うちのお父さんは自分で現場で働くし、リョウ君ちのお父さんとは違うよね」
アキは少し小さな声で続けた。
「お父さん、言ってた。やっぱ金がもの言うよな。俺が捕まっても保釈金なんか払えねえもんって」
「で、なんでリョウ君あぶないの」
「えっ」
「リョウ君、ちょっとアブナイって」
「そうそう、リョウ君てさ、二号さんの子供なんだって」
「二号さん?」
「悠々、わかんない?二号さんてさ、愛人のこと。奥さんの次の人だから二号さん」
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