あの雨の日、きみの想いに涙した。
「俺バイトしないと生活していけないんですよ。それともここにいるだれかが飯を食わせてくれるんですか?」
「………」
大人たちは子どものためだと色んなものを縛りつけようとする。だけどこうして金や食事のことを言うと押し黙る。
結局、自分を守れるのは自分だけ。いくら生活に困っていたとしても見てみぬふりをする。だってしょせんは他人だから。
「た、たしかにお前の事情は知ってる。だけど規則ってもんが……」
さっきまでの威勢はどこへやら。担任は急に弱々しくなった。俺はそのままドアに向かって歩く。そして……。
「先生。知らないで言うより、知ってて言ってるほうがずっと残酷だよ」
――バタンッ!!
俺は力強く校長室のドアを閉めた。俺の足は教室には行かずに屋上へ。
ポケットからスマホを出してすぐにバイト先に電話を入れた。
店長は俺にも責任があるから気にするなと逆に謝られてしまった。俺はただすいませんとしか言えなかった。
店長は最後の最後までいい人で、俺が他のバイトを探してやるとまで言ってくれたけど、そこまで世話になるわけにはいかずに『大丈夫です。今までありがとうございました』と言って電話を切った。