あの雨の日、きみの想いに涙した。


いつかバレるとは思ってた。こんなに早くバレることは想定外だったけど。

「冴木お前……っ」

「やめなさい」

俺に近づいてきた担任を校長がなだめるように止めた。


「どうして禁止されてるバイトをして、しかもパチンコ店なんかでやっていたの?」

校長はさすがだなと思うほど冷静だった。それが逆にイライラしたけど。


「パチンコの店長に聞いて確認は取ったよ。あちらにも否があったみたいだし今回のことは大袈裟にはしないから」

つまり俺はもうバイトに行けないってことか。

――プツン。その時、なにが俺の中で切れた。


「だれが俺を見たかは知らないですけど、いいっすね。ギャンブルに使う金があるヤツは」

俺は校長と他二人の教師を睨みつける。


「お前いい加減にしろよ!普通なら謹慎にするところを校長先生は……」

担任は俺の胸ぐらを掴んで力で俺を黙らそうとする。それが逆撫でして、俺の中でどんどん怒りが増えていく。


「先生。なんで俺が禁止されてるバイトをして、法律を破ってまでパチンコ店で働いてたかわからないんですか?」

この大人三人は俺に両親がいなくて、ひとりで生活していることを知っている。だれにも言いたくないけど、高校入学の時にまでそれを偽ることはできなかった。


「なあ、知ってんだろ?俺がバイトをしなきゃいけない理由を」


胸ぐらを掴んでいた担任の手がゆるむ。

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