べガとアルタイルの軌跡
≪エピローグ≫
もともとスーパーの駐車場だった場所なので、出入りが自由な駐車場だった。

私が行った時、既に事務所の電気は消えていたので、安心して駐車場へ入って行った。

バケツもちゃんと準備して、買って来た花火を手にする。



まだ、市内中心部では、みんな大輪の花火に夢中になっている時間。

私は1人で、小さな花火を手にしていた。



パチ パチ パチ



1本ずつ花火に火を点けながら、私は1つずつ君との楽しい思い出を、思い出していた。

そして、1本ずつ花火の火が消える度、その思い出を消そうとした。



段々本数が少なくなる度、少しずつ涙がにじんで来た。

どんなに思い出を消したとしても……きっと、何処かで花火を見たら、君の事を思い出す。



君も、そうだったら、いいのになぁ。



残り、後2本。

火を点けると、涙が零れそうになり、空を見上げた。



あぁ……気が付かなかったけど、夏の大三角が見えるね。

私と君の星。

べガとアルタイル。



年に1度の七夕。

星空の2人は、会えたのかなぁ?

地上の2人は、もう会う事も出来ないのだから……天に輝く2人には、年に1度でも幸せな時間を過ごして欲しい。



気が付いたら、持っていた花火が消えていた。

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