センセイ



結局、泣いちゃうだけ?
弱いままの私?



ずっと、遠くから見てるだけの毎日。

話すことなんかできなくても、秘かに胸を高鳴らせながら憧れてた。

一年生のときは物理なんてなくて、二年生になってやっと選択授業に入ってきた科目だったけど

白衣の後ろ姿が好きで、かすれ気味に笑う声も大好きだった。

気がつけば教室に近づいてくる足音だけで、センセイが判断できるようになって。

授業前の短い時間だけど、準備室からセンセイと歩ける距離はすごく幸せだった。



大好きで、大好きで。

でも、満足だったはずの時間なのに、いつからかそれは切ない時間へと変わっていったの。

気持ちが大きくなるほどに、近づくことが困難になって。

気持ちも伝えられないで、いじけるだけの弱虫のくせに、願いだけは膨らんで、どんどん欲深くなっていったから。



「ホントに…、嘘なんかじゃ」



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