センセイ
さっきまで包まれてた、白衣と同じセンセイの香り。
もう脱いだはずの風が、暖かく包み込んでくる。
抱きしめてくれるセンセイの身体は、悲しいくらいに暖かくて、優しすぎて。
「…………」
本当は言いたいことがたくさんあるはずなのに、それがひとつも出てきてくれなかった。
いっぱいいっぱい、伝えたかったこと…
「平山、ホントにごめんな。お前に言ってやれる一番の言葉が、今のオレには全然わからなくて。結局こんなことでしか表現できないなんて、教師として失格だよな。
でも、本当に平山を大切に思ってることはわかってほしいんだ。お前の悩みを、ちゃんとわかってやりたいと思ってる。だから、こんなことをしてまで反抗するほど、オレに不満があるなら、それを全部吐き出してほしい。文句があるなら全部言ってほしい。
オレは決して怒らないから。ちゃんと平山の気持ちを理解して、受け入れて、…オレに反省すべきことがあればオレは」
「違うっ。そうじゃ……」
違う。ちがうよ。
私はセンセイに不満があるわけじゃない。私は、私の気持ちは…
「……平山」
勘違いさせてしまった、私の行動。
じっと私を見つめるセンセイが、静かに呟く。
「別に、どっちだっていいんだ」
「……え?」