センセイ
———九月
二学期の始まりは、どこからか寂しさを運んでくる。
「久しぶりぃ!ちょっと、かなり焼けてない?」
「うっそー。ていうかさ、あたし夏休みの課題まだ途中なんだけど」
「それヤバいわ〜、きゃはは」
いつもと同じように、私は隣ではしゃぐ女の子たちの話を耳にしながら、一人自分の席から外を眺めてた。
何も変わらない景色と周りの空気。
ほんの数日前にあった出来事さえ、なかったことのように思えてしまう。
「それより聞いた?今日さ、悠輔の離任式あるらしいよ」
「え?白鳥先生の?なんでまた急に」
でも現実は、淡い期待さえ打ち破るんだね。
どうせなら、全部夢だったと言われた方が辛くなかったかもしれないのに。
あの嬉しかった瞬間だけは、消されたくない記憶として、ずっと私の中に存在するんだ。
「悠輔いなくなると寂しいじゃーん」
「じゃあさ、見送り行こうよ、見送り」
「それってみんなで?いいね〜」