ブルーストーンは永遠に
「しかたないから共犯者になってあげるわ。でもここのコンビニは気をつけたほうがいいわよ。先生とかよく見回りに来るみたいだし。私の友達が、ここでジュース飲んでたのがバレちゃって、えらい目に遭ったって言ってたから」
ゆかりは促すかのように歩き始めた。
「えらい目って?」
「生徒指導室で、みっちり長時間お説教」
ぼくは煙草を吸った友達が先生にバレて、生徒指導室で頭を何度も叩かれながら、三時間も説教されたと武勇伝みたく語っていた奴の事を思い出した。
「それは嫌だな。実はオレ、あそこに三年間入らないことを目標てるんだ」
「それって悪さしないってこと?」
「いや見つからないようにうまく逃げとおすってことさ」
ぼくがそう言うとゆかりはまた笑ってくれた。
「あそこで食べよう」
ひとっ子一人いない公園が見えた。
塗装が削(そ)げ始めたブランコやすべり台が、秋の風に吹かれながら寂しげに佇んでいた。
ブランコに座ると深夜に降った雨で、心なしかしめっぽい空気がお尻に侵略した。
少し錆付いて老いたブランコは、悲鳴を上げるように軋んだ音を立てた。
ゆかりはスカートに折り目をつけないように手でならしながら、ゆっくりと座った。
「それじゃいただきま~す」
コーンの付いたアイスを柔らかくかじりとると、「おいしい」と口をほころばせた。
ぼくはその動向を見守っていた。
長い髪が綺麗な波のように秋風になびいている。
陽は赤味を帯びながら、街の情景と重なりつつあった。
ぼくは人気のない場所で、ゆかりとこうして二人で並んでいるというのがにわかに信じられなかった。
夢かもしれないと本気で思った。だから、そんな心境が影響したからか、気の小さいぼくは自分でも驚くほど冷静だった。
「サッカー面白い?」
ゆかりは横目遣いで言った。
「基礎練習ばかりだから飽きちゃうよ。三年も引退したし、そろそろまともな練習ができると思うんだけど」
「どこの部も一年は一緒よね。私のところは、男女一つずつしかコートがないから三年生が引退してもなかなか練習試合とかはできそうもないな」
ゆかりはブランコを少し揺らした。
軋んだ音が耳を突いたが、やがてそれは小さくしぼんでいった。
ゆかりは促すかのように歩き始めた。
「えらい目って?」
「生徒指導室で、みっちり長時間お説教」
ぼくは煙草を吸った友達が先生にバレて、生徒指導室で頭を何度も叩かれながら、三時間も説教されたと武勇伝みたく語っていた奴の事を思い出した。
「それは嫌だな。実はオレ、あそこに三年間入らないことを目標てるんだ」
「それって悪さしないってこと?」
「いや見つからないようにうまく逃げとおすってことさ」
ぼくがそう言うとゆかりはまた笑ってくれた。
「あそこで食べよう」
ひとっ子一人いない公園が見えた。
塗装が削(そ)げ始めたブランコやすべり台が、秋の風に吹かれながら寂しげに佇んでいた。
ブランコに座ると深夜に降った雨で、心なしかしめっぽい空気がお尻に侵略した。
少し錆付いて老いたブランコは、悲鳴を上げるように軋んだ音を立てた。
ゆかりはスカートに折り目をつけないように手でならしながら、ゆっくりと座った。
「それじゃいただきま~す」
コーンの付いたアイスを柔らかくかじりとると、「おいしい」と口をほころばせた。
ぼくはその動向を見守っていた。
長い髪が綺麗な波のように秋風になびいている。
陽は赤味を帯びながら、街の情景と重なりつつあった。
ぼくは人気のない場所で、ゆかりとこうして二人で並んでいるというのがにわかに信じられなかった。
夢かもしれないと本気で思った。だから、そんな心境が影響したからか、気の小さいぼくは自分でも驚くほど冷静だった。
「サッカー面白い?」
ゆかりは横目遣いで言った。
「基礎練習ばかりだから飽きちゃうよ。三年も引退したし、そろそろまともな練習ができると思うんだけど」
「どこの部も一年は一緒よね。私のところは、男女一つずつしかコートがないから三年生が引退してもなかなか練習試合とかはできそうもないな」
ゆかりはブランコを少し揺らした。
軋んだ音が耳を突いたが、やがてそれは小さくしぼんでいった。