ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~



ワンをかばった人…?



「女の人で、事故に遭った時、多分オレとなにか話してた」



多分?



「オレ、事故に遭った前後の記憶が飛び飛びで、その人の事も必死に思い出そうとしたんけど、誰だか分かんなくて…」



だから、覚えてないんだ。



「気付いた時には、病院のベッドの上だった」

「その女の人は…?」

「亡くなった。即死だって、オレの親が話してるのを偶然聞いた」



交通事故の恐ろしさは、あたしだってよく知ってる。



一瞬で奪われてしまう、命の儚さも。



「オレ、誰かの犠牲のうえに生きるのが怖くて」



事故が生み出す、たくさんの悲しみも。



「その人には子供がいて、その子の泣き顔が、その日から離れなくなった」



怒りも、後悔も、傷も。



「だから逃げたんだ。怪我した体で。病院を抜け出した」



穴の中で2人きり。



そこで語られる、意外なワンの過去。



いつも元気で無邪気で、頭の中なんにも考えてなさそうで。



だけどそういう人に限って、本当は痛みを知ってる。



そういう人に限って、傷を負ってる。



暗くて少しずつ冷えてきた穴の中で、ワンは続けた。



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