ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
【makoto※side】



稀衣ちゃんに初めて話す、幼き日の記憶。



暗くて狭い穴の中は、当時のことを思い出して、随分と居心地が悪かった。



あの時と違うのは、1人じゃないこと。



稀衣ちゃんがいる。



触れたところから、温もりが伝わる。



それだけでどれほど安心するか。



「抜け出した矢先、大きな穴に落ちたんだ」



これは後から知ったことだけど、その穴は、埋めかけの古い井戸だったらしい。



体全身痛くて、もうどこが痛いのかも分からないほどだった。



「このまま死ぬのかなって、思った」



誰にも見つけられず、ずっとここにいたら死ねるのかなって、子供の頭でそんなことまで考えてた。



「あの子のお母さんを奪ったんだから、そうなって当然だって」

「そんな…」



稀衣ちゃんが、悲しい顔をした。



その瞳は、震えていた。



井戸の中は、暗くて寒くて、怖くて。



唯一見えるのは、夜空に光る星だけだった。



だからずっと、上を見てた。



「星だけが、オレを見てた」



だからかもしれない。



あの人の声が聞こえた。



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