ワンラブ~犬系男子とツンデレ女子~
「稀衣ちゃん…?」
「もう誰も責めないから、肩の力抜きなよ」
まるで、あの人に言われてるみたいだった。
「もう逃げてもいいんだよ。その人だって、きっとそう言ってるから」
もう顔もあまり思い出せないけれど、あの声はきっとずっと忘れない。
――――“ぎゅっ”
稀衣ちゃんの言葉に、堪えてきたものが溢れだしそうになって、咄嗟に稀衣ちゃんを抱き締めた。
こんな情けない顔、絶対に見せられない。
オレはずっと心のどこかで、あの時オレが死んでいたらって思ってた。
あの人の未来を奪うこともなかったし、あの子が泣くこともなかった。
たけどもう、その考えは捨てる。
オレ、稀衣ちゃんに出会ってしまったから、もう無理なんだ。
稀衣ちゃんを置いては行けないし、出会わずに死ぬのはもっと嫌だ。
「稀衣ちゃん、ありがとう」
オレと出会ってくれて。
好きでいてくれて。
いっぱいいっぱい、ありがとう。