【短編】 曇り空
「・・・美紅?」

不安になって美紅を覗き込んだ
俯いて
少し震えてる・・・?


そして
次の瞬間
俺の顔を見上げた美紅は
俺の知らない大人の顔をしていた


「先生ごっこも、恋愛ごっこも
もうおしまい。

じゃあ、柏原くん教室に戻りなさいね。」


そう言って美紅は俺から離れた

少しずつ広がっていく二人の距離
俺は縮めたくて・・・離れたくなくて
精一杯手を伸ばした


やっと掴んだのは
真っ白な白衣・・・

美紅は白衣を脱ぎ捨てて
振り向かないまま
歩いていった

「さようなら。」


去り際に一言の貸して

柑橘系の香りと
俺の腕の中に微かなぬくもりを残して・・・


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