【短編】 曇り空
追いかける事もできたかもしれない


追いかけて美紅に縋る事もできた



だけど
最後の言葉が俺を思いとどまらせた


“さようなら”


なんて・・・



「下手くそ・・・。

隠すならちゃんと隠せよ・・・・

中途半端に残していくなっつうの。」


残された白衣に残る
丸い跡

触れるとまだ微かに暖かい


美紅の精一杯の強がり

そして

置いていった俺への想い



気づいたら
白衣にまた跡がついていく




・・・





「・・・あぁ・・・俺、泣いてるんだ。」


去り行く後姿

消えた後も

俺はただそこを見つめ続けていた




聖母の見守る中
俺は溢れる涙を止めることすらできずに
ただ流していた


< 49 / 52 >

この作品をシェア

pagetop