【短編】 曇り空
「だまってれば、調子に乗りやがって。
ガキがいきがってんなよ?」


そこらへんのチンピラなんて
今の一言で逃げ出していたに違いない

ものすごく冷静だけど
絶対的な恐怖感を与える声
そして
逆らう事を許さない
視線


「は?さっきまで泣きそうだったくせに
やせ我慢してんじゃねーよ!!」

男の一人が女の事を羽交い絞めにする

他の男もそれに群がろうとしたとき

「ぎゃーっ!!」

羽交い絞めにしていた男が
耳を劈くような悲鳴を上げた

それに驚き
群がろうとしていた男たちは立ち止まる


「だからぁ、いきがってんなって言ってるだろうがよ?!」

女は両手を腰に当てて
泣き叫ぶ男を鼻で笑った

女の足元を見ると
7㎝はあるだろうシルバーのピンヒールが
男の右足の甲の上で
ぐりぐりとねじ込まれていた

「悪い事をしたらどうするんだっけ?」

女はさらにまくし立てる

男は半泣きになって女に謝った
その一言に
満足したように女は男を解放してやる


「足の怪我がひどくなったらいつでも保健室に来な。
いつでも相手をしてやるよ。

それから
今度こんなことしやがったら・・・
今位じゃ済ませないからねv」

優しく可愛い笑顔から
放たれた恐ろしく冷たい言葉


俺はただ
その一部始終を傍観するだけだった

女はゆっくりと校舎に向かって歩く
俺とのすれ違いざまに
耳元で女が

「女を助けない男はサイテーよ。」
っとささやいてクスッっと笑って去っていった










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