短編集
 僕は足音を忍ばせて、寝室に入る。こちらに背中を向け、ベッド下の収納から毛布を取り出す璋子さん。その細い腰を抱き、ベッドに押し倒す。僕の理性は、さっきから本能を制せずにいた。

 半ば強引に、柔らかい唇を塞ぐ。わざと音を立てて離し、璋子さんの顔を見下ろす。

「こういうのを、性犯罪って言うんじゃない?」
 璋子さんは、言葉だけは勝気に返すが、潤んだ瞳で言われても何の効果もない。
「天ぷら、食べたでしょう?」
「買春?」
 璋子さんの唇の端が上がる。諾、の合図。
 僕は璋子さんに覆い被さるように、体を重ねた。
< 46 / 115 >

この作品をシェア

pagetop