ラブ*アリス
いつしか月は
姿を消して
トゥーンの街は
朝になっていた。
可愛いウサギが
アリスのもとへ
軽やかに飛んできた。
「ねえ、アリス。またこんなところで寝てたの?」
「んー…」
「アリスってば。朝だよ」
ウサギが話しかけても
アリスは目を
開けようとしない。
ウサギはついに
アリスを突っついた。
「アリス、起きてよ、大変なんだよぉ」
「うわぁ!」
驚いたアリスは
目を覚まして
飛び起きた。
朝日が眩しい。
何年も来ている
古い黒ワンピースでは
もう肌寒い。
「おはよう、どうしたの、チコ」
アリスは、
そのウサギを
チコと呼んでいる。
物心ついた頃には
すでに仲良く
なっていた。
チコは、アリスに
いろんなことを
教えてくれる。
けれど、
今日のチコは
いつもと違って
興奮していた。
耳をパタパタさせて
チコは言う。
「大変だよ、アリス、大変!!」
「もーっ。今日はいったいどうしたの?チコ、いつもはお昼くらいに来るじゃない」
ふわふわの
ブロンド髪を
ポニーテールにしながら
アリスはチコに
首をかしげて見せた。
「今日のお昼、トゥーンに王さまが来るんだってさ…!!」
「王さまぁ?」
アリスは思わず
顔をしかめた。