ラブ*アリス
王さまと言われても
いまいち
ピンとこない。
もちろん
オトギの国には
テレビなんかないので
一般市民は
いつも王さまに
お目にかかれない。
だからアリスは
トゥーンに王さまが
来るという、
事の重大さが
分からないのだ。
「オトギの国に、お姫様が存在することが分かったんだってさ!」
「お姫様…?」
アリスは想像した。
この国に
お姫様がいる。
綺麗なドレスを着て
あのミラの街にある
お城に住んで
王子さまと
幸せに暮らす
典型的なお姫様が
頭に浮かんだ。
「いいなあ…」
「そりゃそうさ。きっと美人で、立派な魔女で、一生幸せに暮らすんだろうね」
それに比べて…
アリスは自分を見て
ため息をついた。
アリスはまだ
魔法を使えるように
なっていない。
きっと
出来損ないの魔女に
違いない。
それに、
みすぼらしい格好。
「いいわ。わたしはわたしだもんね」
チコに言った
その言葉は
まるでアリス自身に
言い聞かせるようだった。
「じゃあさ、お昼になったら王さまを見に行こうよ。下の広場に来るみたいだよ」
「んー。賛成っ」
アリスは
クルリと回って
スカートをはためかせ
チコに微笑んだ。
