誘拐 ―おまえに決めた―

リクは無理に笑顔を作った。


「俺が祖父の家に行く時、おまえはえらく泣いてた。今みたく。ほんとの妹みたく思っていたから離れたくなくて、俺も車に乗ってから泣いた。

もう転んでも『痛い痛いの飛んでけ』してあげられなくなる。施設では心を閉ざして、他に友達がいなかったおまえに構ってあげられなくなる。

部屋の片隅で一人で泣いていても『大丈夫』って言ってあげられなくなる。約束も叶えてあげられなくなる。考えれば考えるほど、たまらなかった」



涙が止まらない。

泣いても泣いても、ぽろぽろとただ音もなく目尻を水分が伝う。



涙は枯れることを知らない。



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