誘拐 ―おまえに決めた―
私は濡れたリクの服のボタンに手をかけた。
「濡れてるから、脱がなきゃね」
そう言って、私からリクにキスをした。
窓から見えてしまわないよう、隠れて何度もキスをした。
外の喧騒など聞こえない。
リクの鼓動とそして息遣い。
それだけが私の耳に響く。
リクはゆっくりとでも慈しむように私の身体にキスを落とす。
傷のあるところは特に丁寧に。
初めて、愛のある行為をした。
義父とは違う。
嫌いで仕方なかった行為の中に、愛を見つけた。
私が自らリクの服に手をかけた。
リクに触れたいと思った。繋がりたいと。
ひとつになりたい、と。