JKママ
客の入りも良いそれなりに有名なラーメン屋を経営する父に、帰った事を告げにあたしは店へと向かった。




「父さん、今帰ったよ。」

「おう、詔か!!4人で大人しくしてろよ!!」


でかい声と体格の良さが特徴の父、百丘舜和。
兄や弟達とは正反対の体型で、ゴリラみたいな容姿で暑苦しい時もある。

頭にタオルを巻いて、お客さんが来た時には、威勢の良い声で客を迎えるその父がとてもあたしは好きだ。




多分、兄弟はもうこの世に居ない母に似たのだろう。


母は、あたしが小学校4年生の事に、弟達を産んで直ぐに死んだ。
兄が11歳、あたしが10歳の時だ。弟たちなんて、まだ0歳だから、母の顔を見た事を一切覚えていない。







身体が弱く病弱だったが、とても穏やかで綺麗な母であった。


あたしが同級生と組合いの喧嘩を良くして、怪我をして帰って来た時には笑って、手当てをしてくれた。


頭を軽く小突いて、



「男勝りな子ね。お父さんにそっくり。」
と笑う。


そんな母が大好きだった。
父の舜和を微笑みながらあたしは見つめ、自宅へと静かに戻って行こうと、足を後退させようとした時。





「詔!ちょっと待て。」
父に呼び止められた。

「何?」


キョトンと眼を丸くさせながら聞き返す。




「夜は何処にも行くなよ。大切な話がある。お兄ちゃんと、海斗達にもそう言っておいてくれ。」

「大切な話って?」

「後で、夜に話す。」


何だろう。深刻な事?




「……ふーん、…わかった。伝えとく。」



言い残してあたしはその場を後にした。

< 5 / 28 >

この作品をシェア

pagetop