JKママ
普段低血圧で声を滅多に荒げる事の無い兄の詩音も、無邪気な育ち盛りの元気一杯の弟ふたりも、そして、バスケで声を上げたりしてもともと声の大きいあたしも、今までに出した事も無いほどの声の大きさであった。




これはもう、絶叫とさえ言えるだろう。






父は耳を塞ぎながらハハハッと笑う。



「わ……笑ってんじゃねえよ!!糞親父!!」

「まあまあ、詔!落ちつけよ!」




肩に手を置かれた。にこにこと絶え間ない笑顔が白々しい。
詩音が息を整えながら父に問いかけた。



「父さんが、再婚?その子と?」

「ああ、そうだ。」


自信満々に厚い胸板をドンと叩き胸を張る。


「てかさ……、その子高校生じゃん。それって、隣町の涌井高校の制服だよね」




詩音は無表情に「新しい母」と名乗る女、愛を見上げる。彼女は顔を緊張からか紅潮させ、父に寄り添っている。舜和は彼女の肩をぎゅっと強く引き寄せた。
あたしはその光景に激しい怒りを覚えた。



「それは大丈夫だ!彼女はもう高校2年生で、17歳だからな。」




にこりと愛を見ながら微笑みかける父にあたしは感情を抑えきれなくなった。


「何、ふざけた事言ってんの?!!」
鬼のような形相であたしは声を張り上げた。弟達と愛はビクリッと肩を跳ねる。



「み、みこと……?」
「たいしょう……?」

海斗と陽斗は手を繋ぎ合せた。心配そうに呟く。父もあたしに歩み寄りながら宥めるべく奮闘する。




「おい、詔、落ちつけよ。愛はお前と同い年だし、きっと仲良く……」

「なれるわけねぇだろうがあぁ!!」


はち切れるほど叫び上げ、ずんずんと愛に近づいていく。
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