たぁ坊とるぅ *32page*



アイツが戻った試合は、まるで今までの拮抗が嘘だったかのように傾いた。


気がつけば、10点近く引き離しての逆転勝利。



それぞれの応援席が、うなだれと歓喜の色を混ぜる中、



「ありっした!!」



選手たちは、整列と挨拶を終わらせた。



「るぅ、タオルはちゃんと持ってきた?」

「え?あ、うん」



私お気に入りの、可愛いくまの絵が描いてあるタオル。



「それ、渡しに行こっ」

「わっランちゃん!」



ランちゃんはいつも強引だ。

そして、その長い脚を悠々と動かして歩くから、回転数を稼がなきゃいけない私は息を切らす。



「わー。けっこう出待ち居るねえ」



下の青い体育館の扉まで来てみれば、キャーキャーと騒いでる女の子たちの人集りができていた。



「るぅは“彼女”なんだから、負けるんじゃないよ?」



その“彼女”の定義に対して、私は大いに不服を申し立てたい気分であります。



「あたしも頑張るぞう」

「えっ、ランちゃんもタオル渡すの?」

「うん」

「誰に?」

「誰ってアンタっ」



切れ長の瞳を大きく見開いたランちゃんは、私のタオルを私の頭に巻いて、顎の下で結んだ。



「キャプテンに決まってるでしょっ!?」



あー‥そうだった。

ランちゃんは、あのキャプテンみたいな熱い男が好きなんだった。



「じゃ、私はあの群れに入ってくるから。ちゃんとたぁ坊に渡すんだよ?」



そう言い残して、ランちゃんはあの恐い群れの中に身を投じた。



「すっげランちゃん。中まで潜り込んでった」



女の子のピンクオーラって、凄いよね。



< 12 / 32 >

この作品をシェア

pagetop