たぁ坊とるぅ *32page*



しばらくすると、ミーティングやら整備やらが終わったらしい、うちの高校のバスケ部が登場した。



わーきゃーわーきゃーと黄色い声援が飛び交う中で、女の子たちは次々とお目当ての選手に物を渡していく。

それはタオルだったり甘いものだったり。


それを笑顔で受け取る人もいれば、何も受け取らない人もいた。



アイツは‥




「たぁ坊ーお疲れー」

「めっちゃ活躍だったじゃんっ」

「あ、タオル使って!」

「私のもーっ」

「たぁ坊、ケガ大丈夫?」



……人集りに飲まれてた。




なんとなく、出番を失ったというか‥なんというか。

私は、ランちゃんが巻いたタオルを取ることないまま、遠くでその光景を眺めてた。


だって、私が渡さなくてもいっぱいあるもん。タオル。

ケガだって、私が気にしなくても気にしてくれる人いっぱい居るもん。



なんだか、胸の奥がキュッと苦しくて。

それを抑えるように下を向きながら、そこにあったベンチに座った。



「彼女ってなんだよ」



わかんなかった。

“彼女”っていう特別枠は、何のために設けるの?


解らなすぎて、涙が出てきた。



「ずび‥」



垂れそうになる鼻をすすったその時ーー‥



「泣いてんのか?」



地面に現れたのは、

バカでかい足だった。



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