たぁ坊とるぅ *32page*



「帰ろ」



次の日。
いつものように門の前で待ってるコイツ。

私は顔を見ることが出来なくて。


コクンと下を向きながら小さく頷く。



「ん」



またいつものように、何のために出すのか分からない手を伸ばしてきた。

だから私は、持っていた笛ラムネを乗っける。



「なんでラムネ?」

「持ってた」



そう言うとコイツは、私の頭にポンとデカい手を乗せて



「さんきゅ」



って笛をピーピー鳴らし始めた。



なんだろこの感じ。


うずうずして、

顔を見るのが恥ずかしくって、

コイツの体温を感じると跳ね上がる心臓。



……苦しかった。




てくてくてくてく

チリチリチリチリ



ゆっくり歩いた帰り道。

今日は、イライラよりも、ドキドキの方が勝っていたから。

それを鎮めるためにゆっくりだったのに。



「なぁ」

「あ?」



なんで可愛く返事が出来ないんだろう、私。



「具合、悪いか?」



高い身長を折って私の顔を覗き込むコイツ。

その瞳を見た途端、ほらまた心臓が。


ドキンッ


って跳ねたんだ。



< 15 / 32 >

この作品をシェア

pagetop