1970年の亡霊
 使用された拳銃の件までは、さすがに加藤も知らなかった。

 池谷が言うように、現場には薬莢が残っていなかった事から、当初、使用拳銃は回転式のものではないかと思われた。

 だが、殺害された三枝と、瀕死の重傷を負った三山の身体には、計11発もの銃弾が撃ち込まれていた。

 回転式拳銃の装弾数は、6発乃至5発だ。

 犯人は、全弾撃ち尽くした後、装填し直したのではないかと考えられた。又、所持していた拳銃が2丁だった可能性もあると考えられた。

 だが、それも直ぐに否定された。弾丸は全て同一拳銃から発射された事が判明したからだ。それに、口径が9ミリであると判り、即座にオートマチックの弾丸だと判定された。ならば薬莢が現場に残っている筈ではないか、という疑問に対しては、恐らく襲撃後犯人が拾ったのだろうという憶測が、捜査本部の大勢を占めた。

 ライフルマークが一緒ならば、複数犯の可能性も薄くなる。現実に住民の目撃証言から、襲撃した人間は一人だと判明した。

 11発もの実弾を放てる拳銃は、オートマチックしかない。

 オートマチックならば、9発から14発前後の装弾数だ。

 現場に薬莢が一つも残されていなかった点と、襲撃された二人の身体から摘出された11発の弾丸以外に、弾頭が発見されていない事から、発射された弾丸は全て三山と三枝に命中させた事になる。かなり銃の扱いに熟練した犯人像が浮かび上がった。

 尚且つ、何の躊躇いも無く人間に銃を発射出来る冷酷さと、現場から11個もの薬莢を拾い、証拠を残さない冷静さを持った男であるとプロファイリングされた。

「捜査本部では、現職、元を含めて身内を捜査対象にしてるんですって?」

「俺は部外者だ……」

「せっかく腹割って情報交換しましょうって言っているのに、これじゃ一方的で…て、な、何を……」

 加藤はいきなり池谷の胸倉を掴み、足が浮くほど絞り上げた。



 


< 102 / 368 >

この作品をシェア

pagetop