1970年の亡霊
「おいこら、ネタ交換なんてえ眠い事言ってんじゃねえぞ」

「く、苦しい…っす」

「いいか、こっちは昔の同僚が弾かれて血が頭に昇ってんだ。それを面白おかしくくっちゃべりやがると、その舌が二度と回らねえように引っこ抜くぞ!」

 屋上の金網に力一杯、池谷の身体を押し付け、散々唾を吐き散らかしてから手を離した。

「ゲ、ゲホッ……か、加藤さん…あんたらからすれば、こっちはクソにたかる蝿かも知れませんが……蝿は、蝿なりにプライド持って記事書いてんですよ。他の奴は知らないが、これでも自分は……」

 と言いながら、池谷は胸のポケットからペンを抜き、加藤の前に突き出した。

「こいつ一本で生きてるんすからね」

「臭い芝居に付き合ってる暇はねえんだ」

「君津沖……不審船は、自衛隊の特殊訓練船」

「何の事だ?」

「知りたかったんでしょ……加藤さんとは、これからも仲良くしていたいですからね」

「自衛隊の訓練船って何だ?」

「木更津管区海上保安庁の巡視船…『うねび』。その乗組員に会えば、面白い話が聞けますよ」

 池谷はそう言い残すと、加藤が昇って来た非常階段の方へと消えた。

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