1970年の亡霊
 星野文也は満足していた。

 今日でバイトは二度目だが、面接で言われた通り、本当に楽な仕事だった。

 仕事内容は、指示された所へ小包等を届けるだけ。

 最初、怪しい品物を運ばされるのかと思ったが、届ける先は官公庁や有名企業だったので、そういう不安も消えた。

 これなら宅急便を頼んだ方が安上がりなのにとも思ったが、余計な事は考えないようにした。

 仕事の割に高額な報酬と、又新たに次回の仕事を依頼された嬉しさで、疑問に思うという感覚が麻痺していたのだろう。

 倉田真理恵に至っては、元々風俗の仕事をしていたせいもあって、仕事そのものに対し、何故?という思考を最初から失っていた。

 ただ、少しばかり煩わしいと感じたのは、化粧や服装を直せと言われた事であった。

 デリバリーの仕事は、届け先までワゴン車で行き、そこで降ろされる。

 乗って来た車は、他の配送先があるらしく、迎えは別の車が来てくれる。

 一回の仕事での配送先は、多い日でも三ヶ所だ。

 これで日当五万円なのだから最高だ。

 風俗じゃ、身体を売ったってそこまで稼げない。

 次の仕事も依頼された。日にちは追って連絡するという。

 倉田真理恵は、これでホストクラブへのツケが、少し減らせると喜んだ。




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