1970年の亡霊
 荒木茂男にとって、五万円という金は久しく手にしていなかった大金であった。

 仕事だけではなく、SIMインターナショナルは寝る所と食事、それに清潔な衣類まで与えてくれた。

 本当に至れり尽くせりだ。

 寝泊りする所も、綺麗なワンルームマンションだ。

 このマンションには、他にも何人かSIMインターナショナルでバイトしている者が居るようだが、顔は殆ど合わせなかった。

 他人と関わる事が苦手な荒木には、とても居心地が良かった。

 仕事は毎日ではなく不定期だったが、随分と長い間きちんと仕事をしていなかったから、寧ろ肉体的にも助かった。

 その荒木に、次の仕事が入った。

 今度の日当で、久し振りに女でも買いに行こうかと、荒木は考えた。

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