1970年の亡霊
 勤務を終えて駆け付けた時は、既に通常の面会時間を過ぎていた。

 医師から、面会時間は特別に十分間だけ許可すると言われた。

 集中治療室へ入ると、三山は眠っていた。

 ベッドに横たわる彼女の身体が、やけに細く見えた。

 起こさないように、そっとベッドへ近付く。

 鼻には酸素を送る為のチューブが通されていた。

 痛々しかった。

 加藤は、いつの間にか無意識に三山の手を握り締めていた。

 その手を握り返された。

「き、来てくれた、んですね……」

 加藤は、慌てて手を離そうとしたが、三山の手がそうさせなかった。

「あんたが呼んだんだろうが」

「加藤さんの…加藤さんの名前しか思い浮かばなかった…だけです」

「どうせそんな事だろうと思ったぜ」

 握っていた彼女の手を毛布の中に入れ、

「エアコン、効き過ぎてねえか?」

 と言って、毛布を首までたくし上げてやった。

「さてと、俺を呼んだのは、こんなむさい顔を拝む為じゃねえだろ?頼みたい事は何だ?」

 三山は加藤の言葉に促され、ベッド脇のロッカーを指差した。

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