1970年の亡霊
 所狭しと商品が陳列された店内は、若者達で溢れていた。

 エレベーターで三階まで行き、フロアを一周して階段で一階へ降りた。

 途中、何度も周囲を見渡し、尾行者が居ないかを確認する。

 人が多過ぎて、いったいどの人間が自分を付回している人間なのか判らない。

 三山は足を速め、松濤の官舎へと向った。

 東急本店の裏手に入ると、それまでの街並みとは打って変わり、閑静な高級住宅街になる。

 人通りもまばらで、尾行者がいれば直ぐに気付く。

 もしストーカーが襲って来るとしたら、そろそろだろうと思い、三山は全身を緊張で漲らせた。

 路地を曲がると、目の前に官舎が現れた。

 渋谷駅を降りた直後まで感じていた視線や気配は、無くなっていた。

 ふと気持ちを緩めた瞬間、路地の曲がり角から黒い影が飛び出して来た。

 声を出す間も無く、三山は首筋に衝撃を感じた。

 咄嗟に身体を捻った為、僅かに急所を外れた。

 痛みを感じる余裕など無い。

 三山は襲撃者の身体に抱き着き、二撃目を避けようとした。

 襲撃者の手が、三山の薄いブラウスを弄った。

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