1970年の亡霊
 騒ぎを聞きつけてか、官舎から何人もの人間が現れた。

 三山を見知っていた者が、

「大丈夫ですか?」

 と声を掛けて来た。

「私より、助けてくれようとした人の方が……」

 建物の塀にもたれ掛かり、息も絶え絶えになっているその男に近付いた。

 顔を覗き込むと、照れ笑いを浮かべた三枝と目が合った。

「カッコよく課長を助けたかったんですが…ウッ」

 左の脇腹を抑えてしかめっ面を見せる三枝。

 その様子では肋骨をやられているのかも知れない。

 三山はハンカチを取り出し、血だらけの口許を拭って上げた。

 誰かが通報したのであろうか、パトカーのサイレンが近付いて来た。


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