花の名


だから、そんな彼がなんであたしなんかを好きになったのかが謎だ。


「千尋、おはよう」


ドサッとあたしの隣の席に腰掛ける彼。


ニヒッと口角をあげて笑う彼につられて、あたしも笑ってしまう。


「…おはよう」


まるで昨日のことが夢みたい。


「………」


「…昨日のことさ、考えてくれた?」


「えっ!?」


「千尋のことだから、テンパるだろうなとは思ったからな~

 だから、1日猶予をあげました」


意地悪そうに笑う彼。


そんな彼を見て、思わず胸が揺れた。


それは昨日よりもハッキリと。



「…あの、」


「ん…?」


あっ、ダメだ。


今までなんにも感じなかったのに。


なのに今更、彼の光に当たるなんて…。


優しく笑う彼を見たら、なにも言えなかった。


「うん……」


ただ頷くことしかできなかった。







< 3 / 17 >

この作品をシェア

pagetop