亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
さほど強い風など吹いていないのに、重苦しい城門はドール達の前で独りでに口を閉ざしていった。


…錆び付いた金属音が響き渡り、門は固く閉じられた。

空気も何も入り込めない密封された空間………さっきまであの中にいたとは思えない。












…途端、上空で静かに回っていた巨大な魔方陣は淡い光と共にあっという間に消え失せ………。



「………氷…が…」

「………」



城全体を覆い尽くしていた氷の塊が、潮が引いていくかの様に……物凄い速さで収縮していった。

巻き戻しの映像同然の光景を目の当たりにしながら、一同はどうする事も出来ずに唖然と佇む。



生えていた氷は完全に城の足下へ引っ込み……………何とも奇妙な…静寂だけが残された。

























「―――長…!?」


自分を呼ぶハイネの叫びが聞こえた時には、熱と痛みを宿した頬と共に、ドールは冷たい積雪に叩き付けられていた。



唇が切れたようだ。……鉄っぽい味がする。
バリアン兵士に平手打ちをされた頬を押さえ、ドールは乱れた前髪の隙間から彼等を睨み付けた。




「………貴様……!………勝手な振る舞いは許さぬと言った筈だろう!!………真っ先に逃げおって………!!」


怒りを露わにしながら、兵士は鞘から剣を抜いた。

ドールはそれを、嘲け笑った。

「………どうせやる事は一緒だったじゃないの………あの状況で逃げない方がおかしいのではなくて…?………………女の子を殴るなんて……品格も何も無いわね…」

「………減らず口を………!」

剣を構え出した兵士に対し、ドールを守ろうとハイネが前に出て来た。

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