亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
前を遮るハイネを、ドールは長いハンマーで押しやった。
憎々しげにバリアン兵士らを見詰め、ドールは唇の血を拭った。
「………………勝手…勝手って………………仲間を見殺しにしたあんた達に言われる筋合いは無いわ………あたしらを責めるより、他にやる事があるでしょう…!………………犠牲は伴ったけれど……情報は得たわ。………この城には、近付けないって事よ………さぁ、新しい潜伏場所を決めてちょうだい兵士さん……!」
ザクッ…とハンマーを地面にめり込ませ、ドールは物凄い剣幕で怒鳴り散らした。
………まだ12歳という少女に叱咤されるバリアン兵士。
誇り高く、血の気の多い彼等からすればドールという少女は生意気な小娘でしかないが………一同に、声を詰まらせた。
彼女の言う通り、上の人間にこの事態を報告せねばならない。また、城内潜伏という計画は今のところ実行不可能だ。
………また策を練らねばならない。
それに、いつまでも長居は出来ない。
再び奇怪な事態が起こる可能性は充分にある。
「………………ここから、離れる………」
突き刺さる少女の視線から顔を背け、バリアン兵士は城とは反対側の方向へ踵を返した。
……その後ろを黙って付いて行きながら、ドールは城の方に振り返った。
そこにはやはり、物寂しい………眠りについた孤城が、あるだけであった。