亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
不可思議な光。
…もしかしたら、見間違いかもしれない。
あの空には雲しか無いのだから。
月も星も見えないのだから。
気のせいとしか思えない、小さな光だったが………それを視界に映した途端………酷く……苛立ちが増した。
……最高権力の象徴である玉座の背も垂れに寄り掛かり、だらしなく頬杖を突き………大きな溜め息を盛大に漏らした。
艶のある自分の髪をいじくり、凍て付いた床の模様を素足の指先で、特に意味も無くなぞった。
そして視線だけを夜空に注ぎ………独り、柔らかな微笑を浮かべた。
「―――………私の主よ……貴殿は我が儘なお方だ。……………………………この廃れた青き国に………………また、貴殿が偏愛する人間を立たせる気なのですか………?…………………この、玉座に……」
誰かに対して言っている訳でも無く、かと言って独り言でも無い。
………傷だらけの玉座を、刺青が走ったその細長い指で愛しげに撫でながら、呟いた。
「―――……アレスよ」
この世の神。
全知全能。
この世に有りしものの、全ての父にして母でもある…………創造神、アレス。
崇めるべきその名を口にした直後、嘲るかの様に、鼻で笑った。
「………お願いですから、私を静かに眠らせて下さい……」