亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


















―――この神声塔は標的になりやすい。長居は無用、発つならば夜明け前だ。真北への道のりは今までよりも遠く、険しい。
獣の種類によっては、今が産卵期だったりする。この先は狩人もあまり寄付かない…人里も少ない。方位磁石が狂う地帯でもある。切り株の断面を見るか、太陽の位置を常に見て歩くことだ。

………健闘を、祈る。




















…小さなランプに照らされた、薄暗がりの室内から聞こえてくる声。



ザイが低い声で、ユノとサリッサにそう言っているのを、塔の先端にあたる不安定な角度の屋根の上から、レトは黙って聞いていた。





雪は、いつの間にか止んでいた。


腰掛ける屋根には雪が積もっており、屋根の傾斜と重力によってその殆どは塔の遥か下に崩れ落ちていたが………レトは人並み以上のバランス感覚でこの屋根に座っている。

ぼんやりと夜で更に黒ずんだ空を見上げ、寒さに耐えるかの様に膝を抱えて、縮こまった。


そよ風の様に弱々しい、されど凍て付く寒さを具えた夜風が、背中に当たる。


















………先程の神声塔の御告げでは、神様はここから北へ…この大陸の真北にある『城』へ行きなさい……と、ユノを通して言っていた。




………ここから北へ。更に北へ。北へ、北へ。


そこにあるという『城』というのが、最初、レトは一体何なのか分らなかったが………険しい表情を浮かべたザイの次の一声で、それはすぐに分かった。








「…………『禁断の地』か……」

「……それって……」

聞いた途端、レトはさっと青ざめた。
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