亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
―――レトの瞳は大きく見開かれ、長い睫毛には綿雪の欠片が引っ掛かった。
こんなにも真っ暗な闇の中でも、吐息は白く、目の前の彼の髪は青くはっきりと見えた。
そして改めて、綺麗な髪だな、と心の片隅で思った。
………一瞬、何を言われたのか、分らなかった。
空気を読む事を知らない、互いの間を流れ行く沈黙が、綴られた言葉の意味を少しずつ理解させてくれた。
「………………………………守る…?」
……静かに息をのみ、レトは確認するかの様に復唱した。
「…そうだよ。僕とお母様を………守ってほしいんだ…」
「………………でも…受けた依頼は…これで終わったし……父さんは新しい依頼を受ける事は…出来ない………」
「…僕は、君にお願いしているんだよ」
「………………僕は…でも………まだ、成人じゃないから………依頼は…」
「…レト!」
まだ上手く理解出来ていないまま、困惑気味に受け答えするレトに、ユノはやや大きい声で叫んだ。
名を呼ばれ、レトはビクリと黙り込んだ。
………静かになったところで、ユノは再度口を開いた。
「………これは…依頼じゃないんだよ、レト。………狩人の君にお願いしているんじゃない。……僕は………………信頼出来る、僕の唯一の友に、お願いしているんだ…」
「……………友…?」
狩人としてではなく。
友達として。
友として。
これは、依頼じゃない。
友である者同士の、お願い。
………報酬だとか契約だとか、そんな目に見える繋がりじゃない。