亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


忠誠心故の支援、と彼等貴族は言うが………本当の目的はその見返りでしかない事など、シオンは勿論のこと、亡き51世も最初から気付いていた。







「………マノン夫人、綺麗なお顔が真っ青ですよ。………おこぼれ目当てで、競争率の高い私の養育を見事勝ち取ったんですよね?………私が出て行くと、それもこれも全て水の泡になってしまいますが………まあ、それも良いのではないですか?余計な神経を使う事も無くなりますしね」

含み笑いをしながら楽しそうに話すシオンに、夫人は唇を噛み締めた。

「………っ……ご自分の立場が………分かっていらっしゃるの!?………貴方一人の存在が………どれ程の影響を周りに与えるのか…!」

「周りが迷惑なのでしたら………………私は王位を捨てましょう。………王位よりも、私はサリッサの方が欲しいですし。……ねぇ、サリッサ?………可愛いなぁ…」

無邪気な笑顔でそう言って、シオンは真っ赤になるサリッサを更にギュッと抱き締め、頬擦りまでし始めた。



………もう、他人の入る余地など何処にも無い。

絶対無い。


「………私は幼い頃、亡き父上に一つだけ格言ならぬものを教わっているのですよ。『王族という、高過ぎる身の上が己を蝕むのならば………捨てちゃいなさい』と。…普段厳格な父上でしたから……聞いた私もポカーンとしましたよ。本当に。まさかあんなに茶目っ気のある方だったとは…。ストレス溜まっていたんでしょうね…」





…目元やら口元やらを引きつらせた夫人は、返す言葉が見付からないのか……二人を睨み付け、軽く地団駄を踏む。



マノン家史上、最高の栄華を築く事が出来ると意気込んでいた矢先、野望は崩れ去った。
< 459 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop