亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
ザイの知り合いは少ない。
そんな中でマナは、友、仲間と呼べる人間の一人だ。
子育てにおいては、ザイの良き相談相手でもあったりする。
「…………お袋………てめぇ……」
固まって話をしているグループから外れた所で、ダンテが頭を押さえながら苦しげに立ち上がっていた。
息を吹き返した息子に気付いたマナは、笑顔でレトに囁いた。
「レト君、レト君、うちの馬鹿息子、覚えて無い―?……四年前に初めて会ったんだけど?」
………何故か笑いを堪えながら訊いてくるマナだったが、レトは首を左右に振った。
「………………分から…ない」
「………あらそう。残念ね。………ま、あんまりいい思い出じゃないから、思い出さなくて結構―!馬鹿ダンテが勝手に苛々してるだけだから―。ねぇザイ?」
………………。
この狩人親子の事…全く、覚えていない。何かきっかけというか……その四年前とやらにあった事を聞けば思い出すやもしれないが………………あまりいい思い出でないならば、遠慮しておこう。
………父さんも何故か珍しく機嫌が悪いみたいだし。
…おぼつかない足取りで起き上がるダンテが見えたレトは、そっとザイから離れて彼の元に歩いて行った。
………そう言えば、彼の剣を持ったままだったのだ。
計二回も殴られた後頭部と母親から踏まれた背中と擦りながら、ゼエゼエと苦しげに息をしてマントの雪を払うダンテ。
雪に埋もれた剣を拾いあげて鞘に納めていると、背後から誰かが歩み寄ってくる気配を感じた。
………振り返るとそこには………自分の剣を差し出すレトの姿。
…ダンテは一瞬大きく目を見開き、すぐに視線を逸らした。