亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
あの強烈な炎の息吹一つで、足止めも出来れば殺す事も容易であろう。
もう一人の、狩人の男の足止めを指示していたが……ここはやはり、王族を殺す事が最優先だ。
森の方へ逃げた少年二人を追跡する様に、上空で旋回するハイネに向かってドールは叫んだ。
見上げた頭上の空には、吹雪の向こうに赤い鳥が一羽。
何物にも邪魔されずに羽を広げて悠々と飛んでいる筈のサラマンダーは………………あろう事か、空中で、もがいていた。
(……っ………何…!?)
ドールは驚きのあまり目を丸くして、上空を見上げた。
巨大な怪鳥サラマンダーは、ギャーギャーと甲高い鳴き声を上げながら、とにかく空中で苦しげにもがいていた。
バランスを崩して落下しない様に、必死で羽ばたいている。
………何がどうなっているのだ、と目を凝らして見れば………その赤い羽毛に覆われた太い首には、グルグルと何重にも巻き付いた黒い紐の様なもの。
………紐ではない。………あれは………鞭だ。それもかなり頑丈で長い鞭。
サラマンダーの首を絞める鞭はピンと張り詰め、真っ直ぐ地上から伸びていたが………鞭を辿っても、それを握っている筈の人間の姿が無かった。
鞭は何も無い空中から、切って張り付けた様にそこに存在していた。
そこには、鞭しかない。しかし、鞭はサラマンダーを落下させようとするかの様に、怪鳥の巨体を引っ張る。
乗っているハイネは鞭をなんとかしようにも、首に深々と巻き付いているし、鞭の持ち手を攻撃しようにも、その持ち手の姿が無い。
とにかく、訳が分からない。
「………ジン、程々にしろ。一応言っておくが………殺生は駄目だ」