亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
……自分の、このひ弱な魔の者と口を利く事にも嫌悪感を覚える。ましてや相手は、こちらが声を掛けるだけで決まって身震いするのだから………その度に苛立ち、嫌悪感も倍増しだ。
………主である自分しか知らない、他人は誰一人聞いた事の無いログの小さな声が、ボソボソと遠慮がちに発せられた。
「………………デイファレトに、現在潜伏中……及び向かう予定の兵力は、最多でも………全兵力の…約……五分の…一…です…。………残りは無論、城内配置です…」
「……最多でも五分の一?…王族暗殺に余計な兵力の消耗は避けるべき、と…みたか。………臆病な父上らしい。………他に、兵力が分散される予定は?」
「………近々……反国家勢力の鎮圧が……あるとかで………多分、その鎮圧の際に……兵力は更に分散されるかと……」
「…あの陰険眼鏡の側近が提案していた、『賊討伐計画』とやらだな。………あの男、何をどうするつもりなのか。…裏で何をしているのか知らないが………憶測でいい、それはいつ頃だ?」
「………日は、間近です。………恐らく……あと四、五日後。………下弦の月が昇る日の、前日辺りかと……」
ログは最初からあまり無い勇気を、精一杯振り絞って言葉を紡ぐ。
きちんと答えられているだろうか。
主の耳にしっかりと届いているだろうか。
………自分が話す事で、ご機嫌を損ねたりしていないだろうか。
長い杖を両手で握り締めながら始終ビクビクしているログを傍目に、リイザは顎に手を添えてしばしの沈黙を続けた。
………下弦の月と言えば、創造神アレスがデイファレトの王族に命じた、王政復古の期日だ。