亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………聞くつもりなんて、さらさら無かった。
城内で働き回り、時折立ち止まってはペチャクチャと下らないおしゃべりをする召使達。
毎日毎日、見掛ける彼等の内のその二人が……たまたま、そこにいて。
その角に差し掛かった辺りにタイミングよく、自分がいて。
ただ、耳に入ってしまっただけのこと。
幼い少年の耳に、届いてしまっただけ。
ただ、それだけ。
つまり、父上は。
母上の事を、愛していらっしゃらない。
つまり父上は。
母上を透して見える、大昔に死んでしまった御自分の魔の者を、愛していらっしゃる。
つまり、僕と、兄上は。
僕らは。
(………)
捲った布の隙間から差し込む西日が眩しい。その赤々とした真っ直ぐな光に、リイザは思わず目を瞑った。
眼球を射ぬく様な光線に、鋭いナイフを翳した。
銀の光沢を放つそれは光線を反射し、拒む様に太陽に送り返した。
見詰める視線の先には、赤い砂埃が舞い散っている。
部屋の窓から見える景色はいつも同じだが、いつも……何かが違う。
熱気を含んだ風が、リイザの燃える様な赤い髪を撫でていく。
「―――………それで……どうなっている…」
不意に小さく呟けば、背後で魔の者のログがビクリと震えたのが分かった。