亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
その下弦の月が沈むまでに、あの雪国は新たな王を迎えねばならない。
その期日まであまり日は無いが………果たして、デイファレトの王政復古は叶うのだろうか。
……無事、我が国バリアンの網を掻い潜って。
「………ちょうどいいじゃないか。…デイファレトが王を迎えるのが早いか……こちらが早いか…見物だな」
「………」
薄ら笑みを浮かべるリイザに反し、ログは沈鬱な面持ちで俯いた。
「………………ウルガには……いつお話しに…」
「…今はまだいい。………その時……行動に移すその日でいいだろう。………あの男の意志を確かめるにはそれが一番いい」
下弦の月が、昇る頃。
デイファレトの王政復古の阻止と、賊討伐という目まぐるしい時間が流れる最中。
『その時』が、待遠しい。
その、時が。
喉の奥でクツクツと小さく笑いながら、リイザは壁に寄り掛かり、手元のナイフをクルクルと器用に回した。
反射する西日の欠片は室内を舞い、暗がりで佇むログの顔を一瞬照らした。
美しい模様が浮かぶ魔の者独特の緑の瞳は西日を受け、思わず瞬きを繰り返した。
リイザの手の内で華麗に回るナイフを見た途端、ログは恐怖故か反射的に一歩、後退した。
そんな怯えるログを見たリイザはナイフをしまいながら、せせら笑う。
世の中の全てに、笑う。
「………そう構えるな。…………………今日は……気分がいい」